中日新聞


谷川 俊太郎

「未来へ」

道端のこのスミレが今日咲くまでに

どれだけの時が必要だったことだろう

この形この香りは計り知れぬ過去から来た

遠く地平へと続くこの道ができるまでに

どれだけのけものが人々が通ったことだろう

足元の土に無数の生と死がうもれている

照りつけるこの太陽がいつか冷え切るまでに

目に見えないどんな力が働くのだろう

私たちもまたその力によって生まれてきた

人は限りないものを知ることはできない

だが人はそれを生きることができる

限りある日々の彼方をみつめて

未だ来ないものを人は待ちながら創っていく

誰もきみに未来を贈ることはできない

何故ならきみが未来だから
  • u-den
  • UDホールディングス株式会社
    代表取締役 大野美弥子