武者小路さんや熊谷守一さんなどの水墨画を見ると、吸い込まれるような墨色がある。派手ではないが、しっくりとくる。これだ。この色だ。見ているだけでも紙へのにじみの広がりが伝わってくる。気品のある色だ。単純なのに深い。忍野八海の富士山の湧き水みたいだ。頭が禿げる頃には、きっと無駄がとれて澄んだ色が出る。小池邦夫絵手紙エッセイ「おしのび通信」より大きな大きな背中は全てを見通す。全員が見通す。頭が禿げる頃に余分なものを削ぎ落とし辿り着く境地。